外来をしていると、月に何度も耳にする言葉があります。
「これは、成長痛でしょうか?」
夜中に足を痛がって泣く。でも朝になるとけろっとしている。心配だけれど、病院に行くほどでもない気がする——そんな迷いを抱えて来られる親御さんは、とても多いです。今日はこの「成長痛」について、整形外科医として日頃思っていることを書いてみます。

「成長痛」とは、どんな痛みか

典型的なものは、こんな経過をたどります。

  • 3〜12歳くらいのお子さん
  • 夕方から夜、寝る前や夜中に痛がる
  • 両脚(ふくらはぎ、膝の裏、太もも)に多い
  • 朝起きたときには、痛みが消えている
  • 日中は元気に走り回っている
  • レントゲンや血液検査で異常がない

さすっているうちに眠ってしまい、翌朝は何事もなかったように登校していく。数か月から数年のうちに、自然と消えていきます。

ただ私は、「成長痛」という言葉を、少しだけ慎重に使うようにしています。これは「骨が伸びるから痛い」と証明された病気ではなく、むしろ心配な病気が隠れていないと確認できて、はじめて名乗れる診断だからです。

スポーツをしているお子さんの痛み

小学校高学年から中学生になると、事情が少し変わってきます。部活やクラブチームで体を動かす時間が一気に増える時期です。

この年代で多いのが、

  • オスグッド病(膝のお皿の下が出っ張って痛む)
  • シーバー病(かかとの痛み)
  • 腰椎分離症(腰の疲労骨折)
  • 野球肘(肘の離断性骨軟骨炎)
  • 足の疲労骨折

成長期の骨には骨端線(成長線)という弱い部分があり、傷む場所が大人とは違います。大人なら靭帯や腱を痛めるような負荷が、子どもでは骨の側に集中するのです。

なかでも腰椎分離症は、「よくある腰痛」として様子を見られてしまうことが少なくありません。ごく初期であればMRIで見つけることができ、この段階なら骨がくっつくことが十分に期待できます。逆に時間が経ってしまうと、骨癒合は難しくなる。同じ痛みでも、いつ診断がついたかでその後が変わってしまう。ここが、私が一番もどかしく感じるところです。

そして「痛いなら休みなさい」だけでは、お子さんも親御さんも納得できないと思います。どこがどれだけ傷んでいるかが分かれば、「この動きは避けて、これは続けていい」と具体的にお話しできます。競技を諦めさせないためにも、診断は早いほうがいいのです。

稀ですが、見逃したくない病気

そしてもう一つ。頻度としては決して多くありませんが、こんな病気が足の痛みで見つかることがあります。

  • 小児白血病(骨の痛みが最初の症状になることがあります)
  • 骨の腫瘍(骨肉腫、ユーイング肉腫など)
  • 化膿性関節炎・骨髄炎
  • 若年性特発性関節炎
  • ペルテス病、大腿骨頭すべり症

多い病気ではありません。しかし、ゼロでもない。そしてこれらの初期症状は、驚くほど「ただの成長痛」に似ています。

特にペルテス病や大腿骨頭すべり症は股関節の病気ですが、お子さんは「膝が痛い」と訴えることのほうが多いのです。子どもは痛みの出どころを正確に指し示せないことがある。膝ばかり診ていては、たどり着けません。

こんなときは、一度診せてください

すべてを心配していただく必要はありません。ただ、次のようなサインがあるときは、一度受診をおすすめしています。

  • 痛む場所が、いつも決まって片側だけ
  • 夜中に痛みで目が覚める、泣いて起きる
  • 朝も痛がる、日中もずっと続いている
  • 腫れ、熱っぽさ、赤みがある
  • 足を引きずる、歩き方が変わった
  • 熱が出る、顔色が悪い、食欲がない、体重が減ってきた
  • 押すと、いつも同じ一点が痛い
  • 日ごとに痛みが強くなっている

一つでも当てはまるようなら、「たぶん成長痛だと思うけれど、念のため」で構いません。むしろ、そのくらいの気持ちでお越しいただくのが一番良いと思っています。

当院でできること

問診と診察に加えて、レントゲン、超音波(エコー)、必要に応じて血液検査を行います。そのうえでさらに詳しく調べる必要があると判断した場合には、MRI検査をご案内しています。MRIは、レントゲンには写らない骨の内部の炎症や、初期の疲労骨折・腰椎分離症をとらえることができます。

そして、精密検査や専門的な治療が必要と判断した場合には、速やかに大学病院や小児専門病院へご紹介します。

「紹介するほどではない」と抱え込まないこと。逆に、心配だからと何でも大病院へ丸投げしないこと。この見極めこそが、地域のクリニックの一番大事な仕事だと私は考えています。

おわりに

成長痛の多くは、本当に心配のいらないものです。私も外来では「大丈夫ですよ」とお伝えすることのほうが、圧倒的に多い。

ただ、その「大丈夫」は、診察をしてはじめて言える言葉でもあります。

お子さんの訴える痛みに、「気のせい」も「大げさ」もありません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状が気になる場合は、医療機関にご相談ください。
監修:経堂整形外科内科 院長 木村健人(整形外科専門医)
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