2025年7月、骨粗鬆症の診療指針である『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』が、実に10年ぶりに改訂されました。この10年で新しい治療薬が登場し、治療の考え方も大きく前進しています。今回は、患者さんに知っておいていただきたいポイントを、できるだけわかりやすくご紹介します。

10年ぶりの改訂が意味すること

骨粗鬆症のガイドラインは、これまで2015年版が使われてきました。今回の2025年版は、その後の約10年間で積み重ねられた研究の成果や、新しく使えるようになったお薬を反映した、大幅な改訂となっています。

背景にあるのは、人生100年時代とも言われる超高齢社会です。骨粗鬆症による骨折、特に背骨や太ももの付け根(大腿骨)の骨折は、寝たきりや生活の質の低下に直結します。骨折を防ぐことが、健康に長生きするためにますます重要になっているのです。

変わったこと① 新しい治療薬が加わりました

今回の改訂で大きいのは、この10年の間に登場した新しい骨粗鬆症の治療薬が正式に評価され、ガイドラインに加わったことです。

これまでの骨粗鬆症治療は、「骨が壊れるのを抑える」タイプのお薬が中心でした。これに加えて、近年は骨を新しく作る働きを助ける(骨形成を促進する)タイプのお薬の選択肢が広がっています。これにより、患者さんお一人おひとりの状態に合わせて、より細やかに治療法を選べるようになりました。

変わったこと② 骨折のリスクに応じた治療へ

2025年版では、骨折のリスクがどのくらい高いかに応じて、治療の進め方を考えるという方針がより明確になりました。

たとえば、すでに背骨や大腿骨の骨折を起こしたことがある方は、次の骨折を起こすリスクが特に高いことがわかっています。実際、一度骨折された方は、その後の1〜2年で次の骨折が起きやすいことが知られています。こうしたリスクの高い方には、早い段階からしっかりした治療を検討する、という考え方が示されました。

ここがポイント:「最初の骨折を、次につなげない」

骨折をきっかけに骨粗鬆症が見つかることは少なくありません。大切なのは、最初の骨折を「年のせい」で済ませず、次の骨折を防ぐための治療につなげることです。今回のガイドラインも、この点を重視しています。

変わったこと③ 治療の「目標」がはっきりしました

これまでは「骨密度を上げる」ことが治療の中心でしたが、2025年版ではどこまで改善を目指すか、という治療の目標がより具体的に示されました。目標がはっきりすることで、お薬を続けるべきか、変更したほうがよいか、いったんお休みできるか、といった判断がしやすくなります。

骨粗鬆症の治療は、始めることと同じくらい続けること、そして適切に見直していくことが大切です。定期的に検査を行いながら、治療の効果を確認していきます。

変わったこと④ 運動の大切さも再確認

お薬だけでなく、運動の役割も改めて重視されています。特に高齢の方では、適切な運動が転倒や骨折の予防に役立つことが示されています。バランスを保つ訓練や、無理のない範囲での運動を生活に取り入れることが、骨を守ることにつながります。

もちろん、どんな運動が適しているかは、お一人おひとりの状態によって異なります。膝や腰に痛みのある方は、まずご相談ください。

当院での骨粗鬆症診療について

当院では、骨密度検査をはじめ、患者さんの状態を確認したうえで、最新のガイドラインに沿った治療をご提案しています。「骨密度が気になる」「家族が骨折した」「閉経を迎えて将来が心配」といった方も、お気軽にご相談ください。

骨粗鬆症は、自覚症状がないまま進むことが多い病気です。だからこそ、早めに骨の状態を知り、必要に応じて対策を始めることが、将来の骨折予防につながります。

※ この記事は『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編)の改訂内容をもとに、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。実際の診断・治療方針は患者さんお一人おひとりの状態によって異なります。具体的な治療については、必ず医療機関にご相談ください。本記事は特定のお薬の使用を推奨するものではありません。
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